「妖斗ー、待ってたよ?」
麗羅さんは俺を家へ入れるや否、身体に抱きついてきた。
気持ち悪。
「……麗羅さん、流石にここ玄関だから。家入れて下さい」
ほんのりと赤くなった頬と、硬くなった身体を無視して、俺は麗羅さんに言った。
「もうしょうがないなぁ~」
頬をぷーっと膨らませた麗羅さんは俺から離れ、リビングルームまで歩いていった。
後を追ってそこに入った瞬間、俺は麗羅さんに片足を引っ張られた。そのまま床に押し倒され、耳をなめられる。
「あっ……」
「んっ!」
耳の穴と耳たぶが唾液で濡れて、顔が火照る。
右腕の脇に胸を押し付けられた。身動きが取れない。
「ねぇ、妖斗ご飯食べてる?女に押し倒されるなんて、弱ってる証拠じゃない?」
言われてみれば、最近確かに食べても戻したりすることが多いような気がした。
誰のせいだって言いたくなった。
「……俺が頼れる人なんて、たかが知れてるので」
でも言ったら金をくれないと思ったから、俺はそう言って作り笑いをした。