ブーブーブー。



エレベーターを出ると、スキニーのポケットに入れていた携帯が鳴った。俺は慌てて病院から出て、通話に応じた。






《ねぇ、妖斗。これから空いてる?》





電話をしてきたのは、仕事のお得意さんである麗羅(レイラ)さんだった。





「空いてますよ。……お代は幾らですか?」





この人は決まって俺に1万以上の金を払ってくれる人だ。





拒否反応なのか、唐突に全身に現れた震えを、俺は無視した。




《んー、そうね。今から明日のお昼までで3万はどう?》







それはありがたい。




こちとら、毎日録に食事もできていないんだ。



今日の朝までいた利亜さんと今からの麗羅さんだけで4万いくなんて、上手すぎる話だ。



俺はサラ金から金を借りて、兄の治療費を払っている。総額は200万以上。
俺の全財産は、その借金を減らすだけで吹っ飛ぶ。
そのせいで、俺は毎日ろくな食事ができない。

客にご馳走でもしてもらわない限りは。


「わかりました。すぐに家に向かいますね」





《よろしくー!楽しみにしてるね!妖斗のこと、いっぱい可愛がってあげる》