「大丈夫だよ、何もしないから」






目の前にいる実態を持った化け物は、俺に近づいてそんなことを言ってくる。





「………ひっ、嫌だぁ……」





体が鉛みたいに重くて、一切動かない。







怖いよ……。




………兄さん、兄さんっ。






化け物が俺の手に触れた。






「ひっ、…………ごめんなさい」





自分が何に対して謝ってんのかすら、よく分からなかった。






“何、言う通りにできないの?
じゃあ、お仕置きをしなくちゃね”



利亜さん……。

……ごめんなさい。






従順な犬にすらろくになれなくて、ごめんなさい。






“ねぇ妖斗、ムカデって服に忍び込ませたらどうなると思う?すっごい気持ち悪いらしいわよ、試しにやってみなさいよ”