逃げているのではなかったのか。


半ば呆然としながら、お妃さまは憂いた表情でうつむく白雪姫を見つめました。


「お母さまはきっと、こんな阿呆な娘は恥さらしだとお思いなのではないかしら。……いいえ、ずるい言い方をしたわね。わたしが、この歳で迷子になるだなんて恥ずかしくて、そう思いたいのよ」


こういうところが駄目なのね、と微笑む白雪姫は、猟師の悪口を言いませんでした。


実は案内人がいて、とてもよくしてくれたのだけれど、自分の不注意ではぐれてしまった、自分が悪いのだと、そればかりを繰り返します。


きっと心配させてしまっているわ、と落ち込む白雪姫に、お妃さまはこっそり身じろぎしました。


白雪姫の白魚のような手は、ひどくあかぎれていました。


家事などしたことがない幼い娘が、薄暗い森の中で満足な食事を用意できたとは思えません。

部屋の隅にはどうしてかベッドが七つもありますが、白雪姫が何もしないでいたようには見えないのです。


今すぐにでも帰りたいはずなのに、白雪姫は林檎を売りに来たおばあさんを歓迎し、話を聞き、実際には押し付けられたわけですが、林檎を買おうとしました。


真っ先にお城の方角を聞いたり、案内を頼んだりはしなかったのです。