「……なるほど。そういう過去があったわけですね」 「えぇ、まぁ……」 俺の目の前に座っていた男は、少し悲しげな目をして、ボイスレコーダーを止めた。 「それじゃあ、これまで直樹さんが作った曲の中には彼女のことを唄っているものも?」 俺の顔色を窺うようにして訊く男に、俺は静かに笑って答えた。 「ご想像にお任せします」 男は俺と同じように静かに笑うと、荷物を片付け部屋を出て行った。