コンロの火の上で、メモを左右に揺らす。 しだいに浮き上がってくる、琥珀色の文字……。 「………紗枝……」 はっきりと文字が浮かび上がると、俺はコンロの火を消した。 言葉が、出てこなかった。 出てこない言葉のかわりに、涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。 【直樹くん 好き】 封じ込まれたままだった、紗枝の気持ち。