次にミフェルが来たとき、リタはその手紙を見せてくれた。
今やたった一人の血縁であるフリードに、自分の生涯を、嫁に八つ当たりしてしまった経緯を、子供のフリードに優しくできなかったことに許しを請う文章だ。
しかし、ミフェルの目が最後の行にたどり着くころには、リタは恥ずかしさに負けてしまったようだ。
「やっぱり渡すのはやめるよ。手紙は隠そうと思う」
「せっかく書いたんでしょ。どうして隠すの?」
「書いただけで満足したからだよ。これは私が楽になるだけの懺悔だ。フリードは余計苦しむだけだからね。……それより、遺書のほうを見てごらん、ほら」
遺書には、【死んだあと、別荘に関する権利を若き友人ミフェル=アンドロシュに渡す】とあった。
「だからさ。僕はこんなのいらないってば。施しとか結構だよ」
「もちろん、お前にもある程度のリスクは負ってもらう」
折られていた紙をめくると、遺書には続きがあった。【もし親族の反対があるならば、一族の未婚の娘を、彼の妻をするよう】と続いている。
一族の未婚の娘と言えば愛人の孫だというマルティナしかいない。この記述があるということは、リタがマルティナを一族のものと認めたことになってしまう。
「……いいの、こんなの書いて。リタ様、愛人が許せなかったんじゃないの」
「お前が言ったんだろうよ。子にも孫にも罪はないんだろ? ……だったら、あの子には本当は何の罪もない」
「リタ様」
「私はあの子とまともに話したこともないんだ。お前が気に入るような娘かどうかもわからないよ。ただ、これなら確実にお前にこの別荘を残せる。まあ本当に結婚するかどうかはお前たちが判断すればいいよ」



