伯爵令妹の恋は憂鬱



「……そうだねぇ。お前と話すようにフリードとも話せればよかったのかもね。……だけど、あそこまでこじれたものは、どうすることもできないからねぇ」


寂しそうな声だった。
それに、ミフェルは安心した。なんだ仲間だ。この人だって、結局はひとりなんじゃないか。


寂しい部分を共有していたリタといるのは、ミフェルにとって楽なことだった。

寂しくても泣くわけじゃない。そうして生きてきてしまった事実を抱えて、この人は生きている。後悔というのとは違う、結果を受け入れて寂しいまま生きている。

同類と認識したら、途端に愛着がわいてくる。
リタの憎まれ口も、話すほどに気にならなくなっていった。

いつしか、ミフェルはリタには何でも話せるようになっていた。それはリタのほうも同じようで、ミフェルの突っ込んだ質問に、リタからはきちんと返答がきた。

夫との馴れ初め、夫の浮気、愛人の子の発覚。
子の妻との確執、そして孫との不協和音。


「……まあ、人のことは言えないね。社交的と言われていたけど、実際家の中は棘だらけだった。私が“許す”ということを知らなかったからだよ」

「伯爵と仲直りしたいなら、本人にそう言えばいいじゃん」

「フリードは新しい妻をもらってうまくやっていますよ。今さら何を言うこともありません。それに、……あの家には今、アルベルトの娘がいる。……あの子にだけは優しくしてやれる気がしないし」

「愛人の子の子? そういうのなんて言うの、愛人の孫?」

「呼び方なんてどうでもいいんですよ。まあ……お前にはバカみたいに見えるだろうね。でも私から夫を奪ったあの女の血縁者がいると思うと、冷静になんてなれないんだよ」