やがて社交期が来て、アンネマリーは夜会の準備に忙しく別荘を訪れなくなる。その間も、ミフェルだけは通い続けた。
「あーなんで、アンネマリーは夜会になんか行きたいんだろ」
「女性は結婚相手を探しに行くのですよ。お前も行けばいいじゃないかい」
「僕はいいんだ。ここでのんびりしてるほうが性に合ってる。アンネマリーだってまだ結婚には早いじゃないか。僕らまだ十七だよ。今寄ってくる男なんて、若い娘が好きなだけのエロじじいばっかりだよ」
眉間にしわを寄せ、大きな手ぶりで語るミフェルを、リタは鼻白んで見つめる。
「結局すねているんだろう、お前は。アンネマリーに置いて行かれるようで寂しいくせに。……素直にならないと本当にいなくなってしまうよ。双子だからと言って何も言わなくても通じるわけじゃないんだからね」
「なっ、そういうんじゃないよっ」
ミフェルの不器用さや寂しさを、リタは正確に感じ取っていた。
からかいを込めた言い方だったが、結局のところリタの言う通りで、ミフェルはアンネマリーが自分たちふたりの世界から、あっさりと社交界にいってしまったことが寂しくて仕方なかったのだ。
反撃の気持ちを込めて、ミフェルなりにリタの痛いところを突こうと試みる。
「ねぇ、そういえば、リタ様の家族は来ないの? 僕、会ったことないかも」
「フリードは伯爵ですからね。忙しいんですよ」
「ふうん。ねぇ、なんでリタ様、ここに住んでるの? 本邸で一緒に住めばいいんじゃん?」
「それを面と向かって聞いてきたのは、ミフェル、お前が初めてですよ」
失礼を叱るわけでもなく、リタはからからと笑った。



