*
一行はまず、リタの寝室へ向かった。
執務室はディルクとマルティナがすべての書類を確認済みだし、衣裳部屋は先ほど見てきた。ほかに大事な思い出が隠されているとすればここが一番可能性が高いだろうという判断だ。
寝室は、かつて夫婦で泊ったときの部屋をそのまま使用していたようで、奥にベッドが二つあった。大きな窓から庭が見下ろせて、くつろぐためのソファが手前にあり、ボードゲームの盤がテーブルに置いてある。
ベッドの脇にあった小さな棚には、リタの私物と思われるものがいくつかあったが、遺書と思われるものはなかった。めぼしいと思われたものは大切そうにリボンで結ばれていた手紙の束だったが、パラパラと宛名を確認するのみで、中を見ることはフリードが止めた。「故人とはいえ、プライベートは重視されるべきものだ」という主張には、マルティナも賛成だ。
「リタ様、旦那さんからのラブレターもしっかりとっていたんだねぇ」
宛名を見て、ミフェルがため息をつく。
「そのようだな。祖母が祖父に執心していたのは知っているが、祖父にそこまで気があったってことは意外だ。愛のない政略結婚だと思っていた」
フリードはすでに別の場所を確認中だ。ミフェルは不満そうに唇を尖らせる。
「知らないの? 二人は駆け落ち婚だよ」
「そうなのか? なんで君が知ってるんだ。他人のくせに」
「聞いたからだよ。リタ様、僕には何でも話してくれたんだ。まあでも、身内のほうがしないもんか。僕も両親の馴れ初めなんて、よく考えたら知らないや」
「そうだな。気恥ずかしくて聞いてられん」
一行はまず、リタの寝室へ向かった。
執務室はディルクとマルティナがすべての書類を確認済みだし、衣裳部屋は先ほど見てきた。ほかに大事な思い出が隠されているとすればここが一番可能性が高いだろうという判断だ。
寝室は、かつて夫婦で泊ったときの部屋をそのまま使用していたようで、奥にベッドが二つあった。大きな窓から庭が見下ろせて、くつろぐためのソファが手前にあり、ボードゲームの盤がテーブルに置いてある。
ベッドの脇にあった小さな棚には、リタの私物と思われるものがいくつかあったが、遺書と思われるものはなかった。めぼしいと思われたものは大切そうにリボンで結ばれていた手紙の束だったが、パラパラと宛名を確認するのみで、中を見ることはフリードが止めた。「故人とはいえ、プライベートは重視されるべきものだ」という主張には、マルティナも賛成だ。
「リタ様、旦那さんからのラブレターもしっかりとっていたんだねぇ」
宛名を見て、ミフェルがため息をつく。
「そのようだな。祖母が祖父に執心していたのは知っているが、祖父にそこまで気があったってことは意外だ。愛のない政略結婚だと思っていた」
フリードはすでに別の場所を確認中だ。ミフェルは不満そうに唇を尖らせる。
「知らないの? 二人は駆け落ち婚だよ」
「そうなのか? なんで君が知ってるんだ。他人のくせに」
「聞いたからだよ。リタ様、僕には何でも話してくれたんだ。まあでも、身内のほうがしないもんか。僕も両親の馴れ初めなんて、よく考えたら知らないや」
「そうだな。気恥ずかしくて聞いてられん」



