やがて、メイドがお湯を持ってきて、ローゼが冷めたお茶を入れ替えたので、皆がテーブルに顔を揃えることとなった。
「へぇ。おばあさまが親しくしていたのか。それは初耳だったな」
くつろいだ様子でフリードは足を組みカップを傾ける。
「フリード様はこの別荘にはほとんどいらっしゃらないですもんねー」
棒読みのように返すのがミフェルだ。その態度に、アンネマリーが目を剥く。
「ミフェル、失礼よ! すみません、フリード様。……リタ様は、お客人を呼ぶのがお好きだったようですわ。もしかしたらお忙しいフリード様たちにしてあげたくてできなかったことを、私たちにしてくださったのかもしれませんわね」
「アンネマリー殿はお優しいんですね。だが、俺と祖母は仲違いをしていましたから、そんなことはなかったと思いますよ。あなた方のような優しい人がそばにいてくれて嬉しかったんでしょう」
フリードは特に取り繕うこともせずに、アンネマリーの微笑みを返した。
しばらくはアンネマリーとフリードが当たり障りのない会話を続けたが、やがてしびれを切らしたようにミフェルが立ち上がる。
「ねぇ、伯爵様。さっきほかの人たちには言ったんだけどさ。リタ様は遺書を書いていたんだ。フリード様、見つけてくださいよ」
「遺書? なんで君が知っている?」
「リタ様から聞いたからだよ。僕は実際に見たこともあるし。リタ様はね、遺書は大切な思い出の中に隠したって言ってたんだ」
「……思い出?」
フリードは顎に手を当て、しばし考える。しかし、ミフェルをじっと見据えると、思い返したように首を振る。



