「お言葉ですが、リタ様は本邸に行かなかったのは、望まれていないと思ってのことです。愛人の子が堂々と暮らす屋敷でどうして気が休まりましょう。まして正統なる孫であらせられるフリード様にさえ疎まれていると感じておられるのに」

「……分かった。明日、そのアンドロシュ子爵家の双子が来るらしい。もてなしをお願いできるかな、カスパー」

「はい」

引き下がったのはディルクのほうだ。カスパーは礼をして立ち去る瞬間、ちらりとマルティナを見た。責められているような気がして、マルティナはうつむく。

扉が閉まってから、ようやくホッと息を吐き出した。

「……私、嫌われているんでしょうか」

「マルティナ様にはアルベルト様の面影がありますからね。……まあでも、あれはあなたが嫌いなんじゃなくて、リタ様に心酔していたんでしょう」

マルティナにはディルクの言っていることがわからない。小首をかしげてみるも、彼はほほ笑んで見せるだけだ。

「どちらにしろ今はフリード様の返事待ちです。せっかくですからマルティナ様にはお茶会のホスト役として頑張っていただきましょうか」

「そ、そんなぁ」

突き放すようににっこり笑われて、マルティナは泣きたいような気持ちになってしまった。