男のほうはローゼをまじまじと見て、慌てて肩から手を離す。
「……あ、ごめん。こんなに若い女性だと思わなかった。人違いだ」
君と同じ髪色の女性を知っていて……と男は言い訳をつぶやく。と、隣にいた同じ顔の女性が、ローゼを見つめ続けている。
「待って、ミヒェル。私、この人知ってる。第二王子主催の夜会で見かけたことがあるの」
ローゼは驚いた表情のまま彼女をじっと見つめ、やがて一つ嘆息して口を開いた。
「……アンドロシュ子爵エーリヒ様のご息女の……アンネマリー様?」
「ええ。知っていてくださったの? あなたはクレムラート伯爵家のエミーリア様と一緒にいらしてたわよね」
アンネマリーはホッとしたように笑顔になる。
どうやらローゼと知り合いのようでマルティナはひとまずほっとしたが、ローゼの顔から警戒の色が抜けないことが気になる。
「ずーっと話題に上っていたのよ。エミーリア様が連れてきたあの美しい令嬢はどこの娘だって。美しいピンクブロンド。……いいなぁ、私もこんな風に美しく生まれたかった。結局私はこの社交期ではお相手が見つからなくって……」
ちらりとローゼの左手薬指についた指輪を確認し、アンネマリーはため息をつく。



