昼から出てきたため市場の商品はほぼなくなっていたが、工芸品の店は開いていた。紐を編んで作った髪飾りや、上着の留め具など、ちょっとした贈り物に良さそうなものがたくさん置いてある。


「わあ、かわいい」

「なにか欲しいものはあります? ディルク様からしっかり小遣いをいただいてまいりましたよ」


トマスが片目をつぶって見せる。マルティナはうれしくなって、彼の袖を引っ張りながら店の中を巡った。


「赤ちゃんが触ってもケガをしないような、先のとがっていないものがいいです。この紐で編んだ髪飾りなら、お義姉さまに似合うし、エルナが手を伸ばしても危なくないですよね?」


興奮して一気に話してから、黙っているトマスを見上げると、彼はとても優しいまなざしでマルティナを見ていた。マルティナは顔が赤くなってくるのを止められない。


「……なに?」

「いえ。すねたようなこと言っておきつつ、ちゃんとエルナ様のこと考えているんだなぁと思って」

「だ、だって!」

「いえ。いいんですよ。エミーリア様、喜びますよ。他は何にします? マルティナ様が気に入ったものを教えてください」


結局、マルティナはエミーリアの髪飾り、エルナのぬいぐるみ、フリードには革細工のペンケースを選んだ。それと革ひもを五本ほど選んだ。トマスに何か買ってあげようとすれば絶対に断られる。
マルティナはこの革ひもでベルト飾りを作るつもりだった。