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翌日は、朝から移動だ。
夫婦として初めての外出に、マルティナもトマスも浮かれた気持ちを隠すことができず、休憩に立ち寄った街でも妙にはしゃいでしまう。
馬車がベレ領に着くころには、特に何をしたというわけでもないのにぐったり疲れていた。
ベレ領は遠く、馬で早駆けすれば三時間ぐらいだが、馬車では倍ほどの時間がかかる。
クレムラート家所有の四頭立ての豪華な馬車でも、着いたのは夕方だった。
トマスは、別荘を借用する礼を伝えるためにベレ伯爵の屋敷を訪ねた。
「ベッセル殿、初めまして。ベレ家へようこそ」
すでにギュンターから伝令がいっていたらしく、ベレ伯爵は待ち構えていたように、ふたりを夕食に招待した。
「婿殿の友人ならば、私にとっても友人だ。くつろいでゆっくりしていってほしい」
商人上がりで、豪快な海の男である伯爵の話は面白く、商売をやるうえでのヒントが、会話のそこかしこに転がっている。トマスはすっかりベレ伯爵に魅せられた。
「婿殿はいつもおもしろい話を持ってくる。蜂蜜の加工販売をしているそうだな。保存がきくから商船にのる男たちにもいいんじゃないかと思っているんだ。どうだ。うちに少し預けてもらえれば、販路を拡大できると思うぞ」
伯爵との商談は盛り上がり、トマスは彼にすっかり気に入られた。
酒豪の伯爵は次から次へと酒を出し、トマスは断ることも出来ずにつきあった。
結局その日は、ベレ伯爵の強い要望で伯爵家に泊まることとなる。
マルティナは途中から彼の奥方とふたりの子供たちと話したりゲームをしたりして時を過ごし、遅くまで商談を続けるトマスを待ちきれず寝てしまった。
翌日は、朝から移動だ。
夫婦として初めての外出に、マルティナもトマスも浮かれた気持ちを隠すことができず、休憩に立ち寄った街でも妙にはしゃいでしまう。
馬車がベレ領に着くころには、特に何をしたというわけでもないのにぐったり疲れていた。
ベレ領は遠く、馬で早駆けすれば三時間ぐらいだが、馬車では倍ほどの時間がかかる。
クレムラート家所有の四頭立ての豪華な馬車でも、着いたのは夕方だった。
トマスは、別荘を借用する礼を伝えるためにベレ伯爵の屋敷を訪ねた。
「ベッセル殿、初めまして。ベレ家へようこそ」
すでにギュンターから伝令がいっていたらしく、ベレ伯爵は待ち構えていたように、ふたりを夕食に招待した。
「婿殿の友人ならば、私にとっても友人だ。くつろいでゆっくりしていってほしい」
商人上がりで、豪快な海の男である伯爵の話は面白く、商売をやるうえでのヒントが、会話のそこかしこに転がっている。トマスはすっかりベレ伯爵に魅せられた。
「婿殿はいつもおもしろい話を持ってくる。蜂蜜の加工販売をしているそうだな。保存がきくから商船にのる男たちにもいいんじゃないかと思っているんだ。どうだ。うちに少し預けてもらえれば、販路を拡大できると思うぞ」
伯爵との商談は盛り上がり、トマスは彼にすっかり気に入られた。
酒豪の伯爵は次から次へと酒を出し、トマスは断ることも出来ずにつきあった。
結局その日は、ベレ伯爵の強い要望で伯爵家に泊まることとなる。
マルティナは途中から彼の奥方とふたりの子供たちと話したりゲームをしたりして時を過ごし、遅くまで商談を続けるトマスを待ちきれず寝てしまった。



