葬儀とそれにまつわる対応で、その後二週間、クレムラート伯爵家はあわただしかった。

先々代の奥方とはいえ、名門クレムラート伯爵家だ。弔問に訪れるものは後を絶たず、遠方からの訪問者には部屋を用意しなければならない。使用人も大忙しだったが、ホスト役としてフリードもエミーリアもマルティナもほとんど休む暇がなかった。

それが落ち着いたころ、今度は、エミーリアが産気づいた。
医師や産婆がたびたび屋敷に出入りし、落ち着きを取り戻すことのないまま、屋敷は新たな命の誕生に向け、再びあわただしさを増した。

エミーリアは丸一日陣痛に苦しみ、それに付き添っていたフリードも疲れ切った様子を隠せない。
それでも、無事に産声が聞こえてきて、兄夫婦が労をねぎらっているのを見て、マルティナは心の底からほっとしたのだ。

赤ん坊は女の子で、エルナと名付けられた。
カンの強い子で、眠りが浅い。一時間ほどで目覚めては三十分ほど泣き続けるらしい。マルティナも廊下に出たときに時折泣き声を耳にした。

衛生上の問題なのか、エミーリアが疲れて床から出られないのか定かではないが、赤ん坊が生まれたその日以来、マルティナは義姉と赤ん坊には会えていない。兄とさえ、食事の時に顔を合わせるだけだ。