「...鈴、お前の思惑通りに動いてやるよ」


「...兄さん」


「だから、明日にでも母さんに会わせろ」


"ただし"を付け加えた蘭君が、私の腕を引っ張って、鈴君の前に立たせた。




「こいつも連れてく」


「なっ...!?
なにそれ!!意味わかんないよ蘭君!!」


「彩羽、お前は俺の心の安定剤なんだ」


「...っ」


「何かあったらお前が俺を止めろ。
お前が行かないなら、俺も行かない」


「...」



こんなのって絶対おかしいよ。


なんで私が蘭君を捨てた母親に会わなきゃいけないの。


会いたくない

蘭君のお母さん...いや違う。

蘭君を苦しめた女なんか、見たくもないんだ。



だけど。




「彩羽先輩お願い...。
家族は一緒に暮らした方が幸せなんだよ」



刹那と切なさを絡めながら、私の手をギュッと握る鈴君。


絶対に鈴君に騙されたくない。


そう思っていても
そんな震えた手で、そんな辛そうな顔をしながら言われたら
もう何も...言えなくなっちゃうよ。



私から蘭君を取り上げようとする
家族という繋がりが嫌い。



でも...でもね。


蘭君自身が望んでるんだもん。


お母さんに会うこと。



だから。