わたしと専務のナイショの話

「……かもしれない、いらなくないか?」

 聞いてるじゃないか、と思いながら、のぞみは言う。

「だって、まだ、ピンと来ないんです。
 実は、この間、酔った御堂さんにキスされたんです」

「心配するな。
 明日、殺しておくから……」

 そう低く告げてくる京平の声に、
「いや、だから、これ、嘘だし、言い訳ですからね」
と祐人が殺されないよう、付け加えておいた。

「御堂さんは、酔った弾みでしただけで、私に気はないそうです。

 それで、お詫びに珈琲を奢ってくれたんです」

「御堂にとって、お前のキスは珈琲一杯程度ということだな」

 いや、それ、私がそう指定したんですからね……と思いながらも、のぞみは続ける。

「でも、そのとき気づいたんです。
 御堂さんにキスされたら、なにか汚された感じがするけど、専務だとそうは思わないなと」

 両手を下ろし、口を開きかけた京平にのぞみは言った。

「でも、まだよくわからないんです。

 専務と結婚する自信もありません。
 専務はモテそうだし、家も釣り合ってないし。

 積極的に好きになりたい相手ではないな、と思うので」

 でも―― とのぞみは付け足した。

「でも、今まで私が出会った男の人の中では、専務が一番好きかなあって思います」