わたしと専務のナイショの話

「ところで、御堂さん。
 このエレベーター、先ほどから動いていないようなんですが」

「そうか。
 なんでだろうな」
と言って、祐人は上の階数表示を見上げている。

「御堂さん、押してないですよねえっ? ボタンッ!
 御堂さんっ、酔ってますよねえっ?」
とのぞみが叫んだとき、祐人が反省の言葉もなく、いきなりボタンを押したので、エレベーターは動き出した。

 うう。
 タチが悪いぞ、この酔っ払いっ。

 顔も口調も普段と変わりなく真面目だから、何処まで本気なのか、境目がわからないっ!
とのぞみが頭を抱えているうちに、エレベーターは役員室のある階に着いた。

「よし、行くぞ、坂下!」
と仕事を命じるときの口調そのままに祐人は言い、

 へい、親分……と思いながら、のぞみも後について降りた。

 クリーム色の古い絨毯の敷かれた廊下も人気がなく、薄暗い。

「暗いと怖いな。
 なにか歌え、坂下」
と祐人が言い出す。