わたしと専務のナイショの話

 はい、ありがとうございました。
 ご馳走さまでした、とのぞみが頭を下げると、

「うん」
と京平は頷く。

 やれやれ、無事に帰れた。

 高校時代、ミドリの虫が目に入って遅刻したおかげだな。

 ありがとう。
 ミドリの虫、と思いながら、のぞみが車のドアを開けると、

「坂下!」
と京平が呼びかけてきた。

 思わず、
「はいっ!」
と背筋を伸ばして、返事をする。

 振り返ると、京平は少し迷うような顔をしたあとで、口を開き、
「明日は車を置いてこい。
 朝、俺が迎えに行ってやる」
と言い出した。

「え、でも、遠回りじゃないんですか?」

「かなり遠回りだよ……」
と京平が不満げな顔をしたので、じゃあ、やめておけ、と思ったのだが、京平は言う。