わたしと専務のナイショの話

 仕事中にか……と思ったのが、顔に出たらしい。

「なんだ?」
と京平は威嚇するようにこちらを見て言ってくる。

「俺は五つくらいは同時に物事を考えられるぞ」

 貴方、聖徳太子ですか。

 いや、聖徳太子は十人の話を同時に聞けるんだったな。

 ……だが、この人、私ひとりの話すら聞いてはいないようなんだが、と思ったとき、京平が言ってきた。

「ところで、お前のご両親にはご挨拶したから、今週末は、お前をうちの親と会わせようと思うんだが」

「結構です」

 京平の言葉に被せるくらいの速さで言ったせいか、京平は、今、なにか言ったか? という顔をした。

「お前をうちの親に会わせようかと――」

「結構です」

「何故だ」
と京平は言ってくるが。

 いや、こっちが訊きたい。

 何故だ。

 まだ結婚を了承した覚えもないのに。

 そんなすごいおうちの人に誰が会いたいものか。

 緊張するのに。