心にきみという青春を描く




「そうですよ。今日はカラーをやろうと思ってたくさん持ってきたんです」 

たしかに天音くんはいつもGと書かれたペン先で漫画をカリカリと描いているのに、今日は原稿用紙の横にはカラーマーカーが置かれていた。


「このペンって何種類あるの?」

多彩なマーカーに先輩は興味津々の様子。


「先輩が触ってるそっちの細身のマーカーは180種類で、こっちの持ち手で太いほうは358種類ですね」と、天音くんは二種類のマーカーを交互に指さした。


私も漫画の画材には詳しくないけれど、たしか松本画材店行った時に見かけた気がする。

絵の具同様にとても色の種類が豊富で、文房具などのマーカーとは比べ物にならないくらい値段もそこそこ高かったのは覚えている。


どうやらひとつの色で明度が12段階に分かれているようで、有彩色から濁色(だくしょく)、無彩色に色相を持たない灰色なども近無彩色として細分化されていると、天音くんは教えてくれた。


「全種類持ってるの?」

「まさか。学生の身分じゃ揃えられないですよ」


珍しく天音くんが会話のキャッチボールをしていて、とても楽しそうな雰囲気。

私はチラチラと様子を伺うだけでまだ席は立てていない。なんだかタイミングを見失っちゃったな、なんて思っていると「なつめ」と、先輩に声をかけられた。


「こっちにおいでよ」

そう手招きをされて、あんなに露骨に目を逸らしたのに先輩は相変わらず優しいし、気を遣ってくれる。

勝手にモヤモヤしてたのは私の都合なのに、本当に申し訳ないと反省しながら私は先輩の傍へと向かった。