心にきみという青春を描く




「あ、あの……」

空気を変えようと話しかけたけれど、良い話題が見つからない。考えた末に「せ、先輩の髪は薄茶色なんですね!」なんて不自然な話の振り方をしてしまった。


ああ、私の下手くそ。

部活のこととか顧問の先生についてとか、もっと自然な話がたくさんあったのに。


「染めてるわけじゃないよ。元々色素が薄いみたい」

答えてくれた先輩の顔は優しい表情に戻っていた。まるで日向ぼっこするように窓際の丸椅子へと座って、自分の前髪を触っている。


「猫っ毛だから湿気がある日はぺちゃんこだし、寝癖もすぐつくんだよね」

たしかに少しだけ先輩の髪の毛は横にぴょんと跳ねていた。

可愛いなんて言ったらまた失礼かな、なんて思いつつ。私はゆっくりと暖かな先輩の傍に寄っていく。 


「先輩って、猫背ですか?」

今も背中が丸くなっている。


「うん。あと猫舌に、これも猫のストラップ」

ズボンのポケットから出した銀色の鍵。そこには【美術室】と書かれたシールが貼られていて、先輩のような薄茶色の三毛猫ストラップがついていた。


「わあ、可愛いですね!」

美術室の鍵を先輩が個人的に持っていることが気になったけれど、それよりもゆらゆらと揺れている三毛猫の愛らしさのほうが勝っていた。


「たまに学校をうろついてる猫がモデルらしいよ。拓人が作った」

「え、松本先輩が!?」


こんな手のひらサイズの三毛猫を、あの身体も声も大きい松本先輩が作ったなんて信じられない。


「一応油絵もやってるけど、拓人は元々彫刻とかそっちがやりたいらしいから、部活の時は絵じゃなくてなんか制作してるほうが多いよ」

「そうなんですか」


まだ先輩たちのことは名前しか知らないし、人数が少ない分、色々と教えてもらいながら仲良くなれたらいいと思ってるけど………。