心にきみという青春を描く



「なぎさって今でこそあんな感じだけど、昔はすげえとっつきにくい雰囲気だったんだぜ」

「昔、ですか?」

「うん。入学したての一年の時。俺はクラス違ったし部活の顔合わせで初めて会ったんだけど、自己紹介もぼそぼそ言うだけであとは話しかけても無視。とにかく近づくなってオーラだけは半端なかった」


無視というよりぼんやりしていて聞こえていないことは今でもあるけれど、そんなにピリピリとしたなぎさ先輩は想像がつかない。

でも松本先輩が嘘をつくはずがないからきっと本当のことなのだろう。


「部活の時もずっと無言で絵を描いては塗りつぶしての繰り返し。自分を戒めてるみたいに」

その言葉に胸がドキッとした。昨日見た光景が頭に浮かんだからだ。


「なんていうかその姿が痛々しくてさ。だから一度聞いてみたことがあったんだ。お前、そんなになにと戦ってんのって」

「………」

「そしたら小さな声で自分とって言ってた。それ以降俺も事情は探らなかったし、徐々に打ち解けてくれるようになって今は自分の絵を塗りつぶすようなことはしなくなったけど」


松本先輩はまるで過ぎた過去を振り返るような口調だった。だけど、私の気持ちはざわめくばかり。

だって先輩は今も塗りつぶしているもの。

なにかを消すように、なにかに納得できていないように、ぐちゃぐちゃにしてしまう。


先輩はなにと戦っていますか?

先輩が戦わなきゃいけない理由はなんですか?

また聞きたくて、聞けないことが増えてしまった。