……なぎさ先輩は付き合ってる人はいるのかな。
そういえば聞いたことなかったな。でも彼女がいるなら簡単に私を家に上げたりはしないだろうし、女の子が出入りしてる形跡はなかった。
なかったけれど……。
先輩の瞳の奥には誰かがいる気がした。
これは私の憶測に過ぎないけど、なんとなく切ない横顔がそれを語っているように見えた。
だから私はモヤモヤしている。勝手に、ただの後輩なのに。先輩に好きな人がいたらどうしよう、と昨日からずっと落ち着かないでいるのだ。
「なつめちゃんも一方通行だろ、なぎさに」
「はい……え、はい?」
次に不意討ちをされたのは私のほう。先輩はニヤニヤしていて、私はしどろもどろになりながら不自然に指をもじもじさせていた。
「私はべつにそんな……」
「それだけため息ついてたら十分片想いしてる証拠だよ」
どうやら松本先輩にははじめから見透かされていたようだ。
「いいじゃん。片想い同士これからはツラさを愚痴り合おうぜ」と、強めに肩を叩かれてとりあえず「は、はい」と返事をしたものの、私自身まだ恋を自覚できていない気がする。
だってこれはただの憧れかもしれないし、素敵な絵を描く人だから尊敬かもしれないし。はたまた少し抜けているところもあるので母性本能がくすぐられてるだけかもしれないと、私はまたぐるぐると考えてしまっている。
認めたくないわけじゃない。
ただ、ガツンとしたなにかが足りないのだ。
うまく言えないけれど、もう否定しようもないぐらいの強い衝撃が。



