心にきみという青春を描く




下書きなんておそらくしていない感性だけで筆を走らせた絵。

点や線は乱雑で、絵の具を飛び散らせたんじゃないかってくらい大胆で。だけど完成すると、しっかりと一枚の作品に仕上がる。

青いひまわりを見た時から感じていたけれど……。

なぎさ先輩は天才だ。天才なんて安易な言葉で一括りにしたくないほど、唯一無二の絵を描ける人。


「うん。夢に出てきたクジラを描いたんだけどさ、やっぱりダメだね。夢ってすぐ忘れちゃうから、結局ありきたりなクジラになっちゃった」


……これがありきたり?

私がこんな絵を描けた日には世界中の人に自慢して回るというのに。


「これはなんの絵ですか?」

一目で分かるものもあれば、正直なにが描かれてるのか不明なものもある。


「あーそれ牛乳瓶、の墓」

「墓!?」

たしかに瓶のようなものがたくさん描かれているのはなんとなく分かる。でもまさかお墓とは……。


「うちの近所に配達もしてくれる牛乳屋があるんだけど、回収してきた瓶がいつも店の横に積まれててさ。あ、お墓みたいって」

「………」

「瓶って資源ごみで出されてもまた瓶に生まれ変わるんだって。でも俺には同じ瓶はないような気がして。だって自分が飲んで回収された瓶にはもう会えないでしょ?そう思ったらなんだか無性に牛乳瓶を描きたくなったんだよ」


先輩の言っていることは、分かりそうで分からない。

でも、そうやって捨てられていくだけの牛乳瓶をこんなに素敵な絵にしてもらえたら……。

心がない牛乳瓶も幸せを感じるんじゃないかと思う。

そう思いたくなるほど、先輩の考え方は魅力的だ。