心にきみという青春を描く





私のココアが飲み終わり湯気が消えた頃、「本当になにもないでしょ」と、先輩がリビングを見渡しながら言った。

 
「俺、物欲もないから母さんが片付けていったままなんだ。自分で物を買うこともないし、二年くらいずっとこの状態」

私は静かにマグカップをテーブルに置く。


……つまり先輩は高校一年の頃から独り暮らしをしてるってことだよね。  

すごいな。私なんて家族に甘えっぱなしだし、けっこう寂しがりやだからひとりで暮らすことなんてまだ考えられない。


「先輩はいつもどこで過ごしてるんですか?」

「自分の部屋だよ」


部屋という単語に過敏に反応してしまった私。先輩がチラッとリビングと隣接しているドアを見たから、おそらくあそこがなぎさ先輩の部屋。


「見る?」

「へ?」

思わず間抜けな声が出てしまった。


正直、ものすごく見たい。けれどさすがに自分からは言い出せないと思ってたから……やばい。普通に顔が緩んじゃう。


「……いいんですか?」

「いいよ。女の子は大体引くけど」と、ドアのほうに先輩は移動する。その言葉に引っ掛かりながらも先輩の部屋のほうが気になって私はあとを付いていった。


……ガチャ。ドアを開けた瞬間、アクリル絵の具の匂いが鼻を通りすぎる。

「うわ……」

ドアの向こう側は別世界だった。