心にきみという青春を描く




「先輩って、独り暮らしなんですか?」

キッチンでココアの準備をしてくれている先輩に問いかける。


「ううん。家族で住んでる家だよ。でも父さんの仕事先が北海道になっちゃって。母さんは息子を放ったらかしにして父さんに付いていっちゃったよ」

そう言ったあと「はい」と渡されたマグカップ。白い湯気に混ざって香るのはココアとミルクの甘い匂い。


「ありがとうございます。いただきます」

マグカップに口をつけながら、放ったらかしという言葉が気になっていた。

……もしかしてあまりご家族と仲よしじゃないのかな。

でもあまり立ち入ったことは聞いたらいけない気もするし……。色々と想像していることが、どうやら顔に出ていたらしく、先輩に気持ちを悟られてしまった。


「あー違うよ。母さんは放任主義みたいな感じなんだ。俺より父さんのほうが身の回りのことできないからって」

「そうなんですね」

それを聞いてちょっと安心した。


「電話もしてるし、定期的に北海道のものを送ってきたりするよ。俺、あんまり食に興味ないからいつも食べきれないんだけどね」と、笑って教えてくれた。

キッチンにはわずかな調味料と、ココアなどの飲み物はあるけれど、自炊してる形跡はない。


先輩はいつもなにを食べているのだろう。
このお家でどんな生活をしてるのだろう。

キリがないくらい知りたいことでいっぱいだ。