心にきみという青春を描く




「どうやって帰るの?歩いて?傘もないのに?」

先輩とのふたり乗りに浮かれすぎて、私はすっかり自分の傘を教室に置いてきてしまっていた。


「先輩のを貸していただけたら大変ありがたいです」

「いいけど、なつめの家までけっこう距離あるでしょ。俺の都合で付き合わせちゃったんだし、帰りは送るよ。バス停が近くにあるからバス使おう」

「は、はい」

「でもなにか温かいものでも飲んでいって。それともこのあと用事でもある?」

「残念ながらまったくありません」

「ふっ、じゃあ。上がってよ」


これでも一応、色々と葛藤したつもり。

お家は見たいと言ったけれど、中まで見たいとは思ってなかったとか。図々しいと思われるより、潔い後輩を演じたほうが良い印象を持たれるんじゃないかとか。

でも、先輩があまりに可愛く『上がってよ』なんて言うから、どうでもよくなっちゃった。


「お邪魔します……」

私はなるべく、べったりと足が床に着かないように歩く。特に意味はないけれど、なんとなく先輩のお家に私の足跡がついてしまうことが気になって。


「ココア飲める?適当に座って」

案内されたリビングは玄関で感じたまま、あまり生活感はなかった。

テレビとソファーとテーブルが形だけ揃えられているみたいで、一目(ひとめ)で先輩が普段このリビングを使っていないことが分かる。