「風邪ですか?」
私はぐったりしてる先輩に近づいた。
「うーん。風邪っていうか、雨の日はいつもこうなんだよね」
先輩はそう言って、傍にある箱ティッシュで鼻をかんでいた。鼻声の先輩も、ちょっと女の子みたいなくしゃみも可愛いけれど、本人は相当ツラそうだ。
「大丈夫ですか?熱とかは?」
「分かんない。測って」
先輩は自然と私の手を掴んで、そのまま自分のおでこへと重ねる。これは不意討ち……というか、また私の心臓が変な動きになっていた。
「どう?」
「……な、ないと思います」
「でしょ。ただ鼻水が出るだけなんだよね」
先輩は涼しい顔をしているけれど、熱があがってしまったのは私のほう。おでこに触れた手も、まだ速い動きをしている鼓動も、なにもかも先輩のせいで平常心ではいられなくなってしまった。
「っていうかそれ、アレルギー鼻炎じゃないですか?たまにいますよ。寒暖差が原因で雨の日に鼻がぐずぐずしてる人」
私たちの様子を見ていた詩織先輩が言う。
なぎさ先輩のくしゃみに慣れているのか先輩はとても冷静だし、松本先輩なんて見向きもしないで、まだ天音くんに交渉中だ。
「本当に?じゃあ、俺アレルギーなのかも」
「連続でくしゃみが続くと絵も描けないですし、今日は早めに帰ったらどうですか?ちょうど雨も弱くなってきてますし」
詩織先輩の言うとおり、大降りだった雨は小雨になっていた。



