「なんだよ、超腰抜けじゃん」
松本先輩が拍子抜けしている中で、やっと天音くんが声を出した。
「なんで僕なんて助けるんですか?そんなこと頼んでない」
天音くんはまだ強がり続けている。
私はぐしゃぐしゃになった漫画を拾い上げて汚れを手で叩く。そして、言わずにはいられないこと。
「ねえ、一生懸命描いたものを踏まれてまで捨てられない意地ってなに?」
こんなに誰かに対して苛立ちを覚えたのは初めてかもしれない。
「天音くんの漫画を気持ち悪いって言ってたよ。それで平気で汚い靴で踏んでたよ。なのに、助ける必要がなかったとか、じゃあ、好きな漫画をこれからもバカにされ続けて、パンを買わされたり、コンビニまで走らされたり、お金をとられてもよかったって言うの?」
今までにないぐらい私は声を張る。
「……べつにどうでもいい。自分のことなんて大切じゃないし、お金もパシりもべつにいい」
天音くんはぼそりと答えた。またイライラしはじめて、さらに怒ろとすると……。
「けど、漫画をバカにされたことは悔しい」
乾いた地面が天音くんの涙で濡れていく。
天音くんのことはまだよく知らない。でもきっと、天音くんにとって漫画以上のものはないのだろう。
イヤなことをいくらされても耐えることはできたけれど、漫画のことだけは耐えることができなかった。
それが、この悔し涙。
「絵をバカにされたなら絵で見返せばいい」
そんな声とともに現れたのはなぎさ先輩だった。
先輩は私が拾った漫画をじっと見つめたあと、諭すように天音くんに言葉を続ける。



