心にきみという青春を描く




声と身体が大きな人は、松本拓人(まつもとたくと)先輩。学年は三年生で、油絵専門。

次は笹森詩織(ささもりしおり)先輩。学年は二年生で、淡彩画専門。

最後は、三上なぎさ先輩。学年は松本先輩と同じ三年生で、アクリル画専門。

私もなんとか自己紹介することができて、とりあえず美術室の丸椅子へと腰かけた。


「一応、松本先輩が部長だけど、それは形だけで私が部長みたいなものなの。なにか聞きたいことはある?」と、笹森先輩。

「えっと、顧問の先生は……」


なんだか私が想像していたものと違う。普通は先生が中心になって話をしたりするはずなのに、部活開始からもう20分が経ってるのに誰も来ない。


「顧問の藤田先生……最後来たのいつだったかしら?」

「冬じゃね?」

「いや、秋が最後だったよ」

笹森先輩、松本先輩、なぎさ先輩の言葉を聞いて、なんとなく我が校の美術部の実態が見えてきた気がする。


「じゃあ、部員は私を含めて四人だけですか?」

「実質あと10人はいるはずなんだけど、みんな幽霊部員よ。ちなみにあなたの真後ろにいる男の子は本物の幽霊?」


……え、と振り返ると、たしかに背の低い男の子がいて私は「ひぃぃ……!」と、椅子から飛び上がる。

尻餅をつく寸前に、なぎさ先輩に腕を抱えられてなんとか痛い思いをしないで済んだ。


「えっと、きみは?」

私にもなぎさ先輩にも見えているということは、きっと幽霊ではない。


「一年の芦沢天音(あしざわあまね)です」

どうやら、私以外の部員希望者がいたようだ。


「じゃあ、今年の新入部員は二名ね!これから五人で仲良くやっていきましょう」

笹森先輩は満足そうで、部長なのに仕切れない松本先輩は不満そうで、なぎさ先輩は眠そうで。


ああ、この先、私は美術部でやっていけるのだろうか。

今は不安しかない。