「こんにちは。月岡なつめと申します」
私も挨拶をすると、気さくに「ゆっくり見ていってね」と笑ってくれた。顔はそっくりなのに松本先輩と違って声は大きくなかった。
早速私は店内をぐるりと見渡す。決して広いとは言えないお店だけれど、品揃えはかなりのもの。
方眼用紙やなにに使うのか分からない大きな和紙が丸めて置かれていたり、カラーペンもたくさんある。けれど、一番はやっぱり絵の具。
中に入った瞬間からインクの匂いがしていたけれど、各メーカーごとに練りタイプから固形タイプ。そして瓶に入った液状タイプまで様々なものが陳列されていた。
比べたら失礼かもしれないけれど、ホームセンターとは全然違う。
絵を描くための道具しか売られていない場所。それはつまり絵を描く人しか買いにこない場所でもある。
美術室の絵の具だけで目移りしていたのに……。
ここなら1日中いても飽きないかもしれない。
「ところで先輩の絵の具はどれですか?」
さっきから探しているけれど、なにせ数が多すぎて見つけられない。たしか黒いデザインのメーカーだったはずだけど。
「弁償なんて本当にいいのに」
「ダメですよ!」
私の引かない姿勢を見て、なぎさ先輩は仕方ないという顔で棚の上のほうを指差した。
「あれだよ」
……あんなに高い場所にあったんだ。どうりで見つからなかったはずだ。
私だったら踏み台を使わなくちゃ絶対に取れない絵の具に先輩は簡単に手を伸ばした。
「はい」と渡された絵の具は間違いなく私が踏んでしまったコバルトブルーの色。30mlのチューブは私が持っている絵の具より量が多いせいか重たく感じた。
と、その時。お店のドアが開いて松本先輩が戻ってきた。



