心にきみという青春を描く




「これどこに置いておくんですか?」

名前は高橋さんに決まった。というか、なぎさ先輩が勝手に名付けた。


「あそこ」

先輩が美術の本が並べられている棚の上指さす。


「……わっ!」

そこには佐藤さんと鈴木さんがいた。普通の白い石膏像は窓際にあるけれど、まさかこんなところに松本先輩の作品が置いてあったとは……。


「全然気づきませんでした」

「気づかないほうがいいよ。ひとりで美術室にいたりすると、じっと見られてる気がしてゾッとする時あるから」

「脅かさないでください!」

ああ、もう意識せずにはいられない本棚の上。次から絶対に見ちゃう。


「ねえ、なつめ」

「はい?」


名前を呼ばれて振り向くと、先輩はおもむろに私の頬に触れた。ドキッと一瞬で鼓動が速くなる。


「なな、なんですか……」

笑っちゃうぐらいバレバレな動揺。


「顔に絵の具がついてるよ。洗っておいで」

無邪気な顔でそう言われて、私は恥ずかしさを隠すように急いで流し台へと向かった。


窓の反射を利用して確認すると、たしかに赤色の絵の具がついていた。

手で擦ってみたけれど落ちなくて。そういえばアクリル絵の具は乾くのが早いって言ってた気がする。


水でパシャパシャとしても完全には落ちきらずにどうしようか悩んでいると、ポケットにリップクリームが入っていたことに気づく。

〝絵の具がついたらオイルで落とす〟先輩から教えてもらったことを思い出した。


リップはオイルじゃないけれど、油分が含まれてるしイケるかも……!と、早速試してみる。

絵の具がついた箇所にリップを塗ると、ビックリするぐらい綺麗に落ちた。