「……わあ」
そこには鉛筆の線に淡い色をつけた風景画が描かれてきた。
おそらくこれは学校の近くにある河川敷だと思う。
余計な線は描かずに最小限のタッチで表現して、線からはみ出している絵の具でさえ味わいがある。
他のページにも様々な風景がスケッチされていて、どこかで見たような街並みなのに、まるで故郷に帰ってきたような懐かしさも漂わせていて。
これはたしかに、鼻の奥がツンとする絵だ。
「……淡彩画って、はじめて見ました」
デッサンが大切と言っていた笹森先輩の言葉がようやく分かった気がする。
好きなものを描くための技術。基本的なことから学んでいかないと、こんなに素敵な風景は描けない。
「水彩画も淡彩画も描き方は変わらないのよ。ただ淡彩画は水彩絵の具でも本当に淡く色づけするだけで、大事なのは下書きのほうなの。線を書き込みすぎるとしつこくなるし、その加減はやっぱり枚数を重ねないと身につかない」
きっと先輩は、何枚も何十枚もスケッチをしてきたのだろう。この透明感のある瑞々しさは簡単には真似できない。
「私もいつか、こんな絵を描けるようになりたいです」
絵さえ描ければいいと今まではぼんやり考えていたけれど、初めて明確な目標が芽生えた。



