「月岡さん、デッサンはどう?」
笹森先輩が様子を見にきてくれた。
「やっと陰陽の付け方も分かってきて今はこんな感じです」
ずいぶんと立体的なリンゴになってきたと思う。まあ、ほとんどなぎさ先輩に手伝ってもらったんだけど。
「初めてにしてはすごくよく描けてるわ」
「ありがとうございます」
「じゃあ、少しだけ中断してこっちに来て」
呼ばれたのは笹森先輩がいつも絵を描いている場所だった。側にあるテーブルの上には絵の具や色鉛筆が並べられている。
「今日、自分の道具持ってきてる?」
「はい」
私はカバンから真新しいパレットとまだ一度も使っていない12色の絵の具を出した。
「ホームセンターで揃えてきた感じね」
その通りでございます。部活に入る前は紙とペンと絵の具さえあれば描けると思ってた。でも絵に対する知識が増えていくと、道具も適当じゃダメなんだって分かった。
「……これじゃ、いい絵は描けませんか?」
ぽつりと笹森先輩に問う。
「それを悩む前にまず描くことへの自信をつけないと。好きなものを描くためにも、まずは身近なものからスケッチしていくのがいいと思う」
そう言う笹森先輩の手元には、いつも持ち歩いているスケッチブック。
「あの、それ見せてもらってもいいですか?」
お願いすると、先輩は快くページをめくってくれた。



