「ねえ、これってカンガルーポケットって言うの知ってる?」
放課後。昨日のデッサンの続きを描いているところに、なぎさ先輩が私の元にきた。
いつものようにパーカーの紐をゆらゆらと揺らしながら、これと指さしてるのはお腹にある大きなポケット。
「まあ、たしかにカンガルーのポケットに似てますよね」
それで赤ちゃんを育てるのはムリだけど。
「先輩って、そこに手を入れるの癖ですか?」
見るといつも両手をポケットに入れてるし、今だってそう。
「癖っていうか入れたくならない?」
「うーん。私パーカー持ってないのでよく分からないです」
「え!?持ってないの?嘘でしょ?」
そんなに驚かなくても……。基本的にボーイッシュな服装はしないし、あまり洋服にも興味がないので普段は膝丈のラクなワンピースしか着ていない。
なぎさ先輩の私服は見たことがないけれど、やっぱりパーカーばかり着てるんだろうか。
ラフな格好なのにだらしなく見えずに、制服だってこうしてなぎさ先輩の色に染めてしまう。
薄ピンク色のパーカーをこんなにも着こなせるのは、なぎさ先輩ぐらいじゃないかな。



