これは夢なんじゃないだろうか。
夢かもしれないのに、次々と涙が溢れてとまらない。なぎさ先輩は私の前で足を止めた。
「中学生みたい、なんて言ってこともあったけど、俺はなつめに何回もドキッとしてたし、可愛いなって思って触れてた。そういう気持ちにずっと気づかないふりをしてたけど、今からやめる」
先輩はそう言って、私の涙を優しく指先で拭った。
まるで、世界にふたりだけしかいないみたいに静かだ。そして……。
「俺はなつめが好きだ」
その言葉が聞こえた瞬間に、私は人目も気にせずに先輩に抱きついた。
「……っ、本当ですか。夢じゃないですか……?」
誰か私の頬を思いきりつねってほしい。泣きじゃくる私を見て先輩は「本当だよ」と、頬に手を添えた。
痛くない。痛くないけど、夢じゃない。
「私も……っ、私もなぎさ先輩のことが大好きです!」
先輩との間にあった透明の壁。何度も飛び越えようとしたけれど失敗して、そのたびになぎさ先輩が遠くに感じてた。
でも今はもう私たちに距離はない。
それを確かめるようにぎゅっとすると、先輩は包みこむように抱きしめ返してくれた。



