「俺、もう一度人物画を描くならなつめにしようって決めてた」
先輩が真剣な瞳で私のことを見た。
「俺はなつめに嘘をつきたくないから正直に言う。葵のことはこの先も忘れられないし、大切だって気持ちも変わらない。だから俺はなつめを選ぶ資格はないって思ってた」
人が横切っていく美術館で、きっと無数の声が飛び交ってるはずなのに、今はなぎさ先輩の言葉しか聞こえない。
「でもなつめはそんな俺を諦めないでいてくれた。弱さを見せろって泣いてくれた。迷いながら答えを探しているのは俺だけじゃないって叱ってくれた」
先輩が一歩ずつ私との距離を縮めていく。
「そうやっていつでもまっすぐ俺のことを見てくれたなつめのことを俺も諦めたくないって思った」



