まだ日向くんの最優秀賞の余韻が消えずに、自然と私たちは広いフロアを別々に鑑賞していた。
……それにしてもなぎさ先輩が遅すぎる。
もしかして途中でなにかあったんじゃ……と、スマホで連絡を取ろうとした瞬間。私の瞳に一枚の絵が映った。
……ドクンッ。
心臓が跳ねたのと同時に、じわりと胸の奥が熱くなってくる。
「な、なんで……」
スマホを落としそうになりながらも、私は目を何度も擦って目の前の作品を確認した。
【秀作賞】と書かれた大きなキャンバスには〝私〟の姿。
不透明のアクリル絵の具を使い、まっすぐと真正面に向かって笑っているのは間違いなく私だ。心臓の鼓動が鳴りやまない中で、「なつめ」と後ろから名前を呼ばれた。
振り向くと、そこにはなぎさ先輩が立っていた。
「ごめん。遅れちゃった」
パーカーの紐をゆらゆらと揺らしながら、先輩がゆっくり近づいてくる。
「駅まで自転車で行こうとしたらタイヤがパンクしててさ。それで急遽歩きで向かったんだけど、そしたら途中で迷子の男の子がいて交番まで連れていってたんだ。あ、嘘だと思ってる?嘘みたいだけど本当なんだよね」
先輩がペラペラと遅刻した理由を話していた。
遅刻はもういい。嘘だと思ってないし、先輩らしいハプニングだなって思う。
けれど、その前に……。
「こ、これって……」
私は先輩が描いたであろう作品を指さす。
違う人だったらどうしよう。でも他の人が私をモデルにするはずがないし、この筆使いはどう見ても先輩のものだ。



