心にきみという青春を描く




そう、先輩はこの場にいない。駅前で待ち合わせだったというのに【遅れるから先に行ってて】とメッセージが届いて、私たちは予定の電車へと乗り込んだ。

途中の乗り換え時間に余裕もあったし、会場に着くまでは合流できるだろうと思っていたのに先輩はまだ来ない。


「なぎさのヤツ、あと30分くらいかかるって」

電話で連絡を取っていた松本先輩が言った。


「ったく……。とりあえず本人がいなくても中に入るぞ。ゆっくり作品見てれば後から来るだろ」と、藤田先生。

たしかにここは屋根もないし直射日光も強いので、なぎさ先輩が到着するまでに誰か倒れてしまう可能性もある。

結局、暑さには勝てずに先生の言うとおり、先輩が来ないまま私たちは会場へと入ることにした。


エレベーターを使って地下2階へと行くと、すでにたくさんの人たちが作品を鑑賞していた。

夏休みということもあり家族連れの姿もあったけれど、やっぱり学生が多い。私たちのように仲間の付き添いの人もいるだろうし、自分の作品をひとりで確認してきてる人もいる。


……高校生の一番が今日で決まる。

なんだか壁に飾られた作品を見てやっとすごい場所にいるんだって実感してきた。


「っていうか本人が来ないと、どれが三上先輩の絵か分からないですよね」

天音くんが冷静にぽつり。


今回は学校名も個人名も伏せているので、作品の下には名前のネームプレートがない。しかも、なぎさ先輩はずっと自宅で絵を描いていたので、誰も出品した作品を見ていないのだ。