心にきみという青春を描く




それからなぎさ先輩はコンクールに向けて絵を描きはじめた。私もみんなの勧めで夏休み明けの美術展に参加することになり、今日も美術室でキャンバスと向かい合わせ。


「あれ、三上先輩また家で描いてるの?」

隣では詩織先輩が淡彩画の下絵を描いていた。

なぎさ先輩はコンクールに出品する絵は自宅で描きたいと、最近は毎日まっすぐ家に帰っている。


「ここだと集中力が途切れますからね。急に大声を出す人がいるせいで僕もさっきデッサンが乱れました」と天音くん。

「いや、急にセミが目の前を横切ったら誰でもビビるだろ」


セミが窓から入ってきたのは数十分前のこと。松本先輩は身体が大きいのに虫や昆虫の類いが苦手らしい。

羽音を立てながらけたたましく鳴いていたので、私がさっき外へと逃がしてあげたのだ。


「それにしても、なつめちゃんが素手で触るとは思わなかった」

「犇(ひし)めき合ってる虫は嫌いですけど、セミとか単体のものなら平気ですよ」


あまりセミを気持ち悪いと思ったこともなかったのだけれど、松本先輩以外の他のふたりも触ることはできなかった。


「その勇姿をなぎさに写メ撮って送ったから」

「えっ」


慌ててスマホを確認すると、たしかにグループメッセージに写真が載せられている。しかも、わんぱく少年のようにセミを掴まえて『ほら、大丈夫ですよ』と、みんなに見せてるところの写真だった。