「待ってください!」
私はとっさに先輩のハンドルを持つ手を掴んだ。
その瞬間、先輩はとても困った顔をしていた。
いや、困るというより、やめてという表情に心が折れそうになる。
「どうして急に避けるようになったんですか?……私の告白がそんなに迷惑でしたか?」
「……違う」
返事は返ってきた。でも視線は交わらない。
「私に過去の話をしたことを後悔してますか?」
私は嬉しかった。誰にも話していなかったことを聞けて、はじめて先輩の心に触れられたような気がしていた。
「違う」
「じゃあ、なんで避けるんですか?」
私は先輩を掴む手をさらに強くさせる。
「俺はなつめの気持ちには応えられない。忘れられない人がいるってちゃんと言ったはずだよ」
「だから目も合わせてくれないんですか?」
「そうだよ」
「私を諦めさせるためですか?」
「そうだよ」
食らいつけばつくほどに、先輩の声は淡々としていく。先輩の前では泣かない。泣いたらもっと呆れられる。なのに、声の震えが隠せない。
「……私に1%の可能性もありませんか?私は一瞬でも先輩の心の中に入ることはできなかったですか?」
言いながら、なんて幼いのだろうと思った。
欲しいものが手に入らなくて駄々をこねてる子どもみたい。
こんなことを聞いたって先輩をさらに困らせるだけなのに。
先輩は「そうだよ」とは言わなかった。
なにか違う言葉を言いかけて、そのまま逃げるように帰っていった。



