「三上先輩、職員室に寄ってから帰るって言ってたから、まだ間に合うんじゃない?」
「……天音くん、ありがとう。私、行ってくる……っ!」
勢いよく駆け出す足。美術室を出て長い廊下をひた走り、息が上がってきた頃に自転車置き場から出てきた先輩を見つけた。
「ハア……なぎさ先輩っ!!」
引き止めるように呼んだ名前。
校舎の外だというのに、ローファーに履き替える時間も惜しくて足元は上履きのまま。
先輩はビックリしたように振り向いた。
サラサラと風に揺れる髪の毛や白地のパーカー。地面に映るシルエットでさえ遠くからでも私はなぎさ先輩だって分かる。
久しぶりに目が合った。でもすぐに先輩は視線を変える。
まるで磁石みたいだ。私たちが同じ気持ちだったら引き合うことができるのに、同じ気持ちじゃないから反発し合うだけ。
「……私、先輩と話したいです。だから一緒に帰りませんか?」
ても私たちは磁石じゃない。だから歩み寄ることをやめなければ、いつか綺麗に重なることができるかもしれない。
その努力を私はやめたくない。
「俺はなつめと話すことはないよ」
「でも私はあります」
「俺はないから」
先輩は強めの口調で言い返して、そのまま自転車を押していく。



