心にきみという青春を描く




「一年生に掃除を任せて帰るなんて立派なパワハラだよね」

部活終わりの美術室。私は椅子と机を綺麗に直し、天音くんは床をだるそうにホウキで掃いていた。


「当番制にしようって言ったのは天音くんじゃなかった?」

おそらく早く帰りたい日があってとっさに言ってしまったに違いない。けれど提案が通ってしまい、今では曜日ごとに後片付けをする人が決まっている。

今日は見てのとおり一年生コンビの私と天音くんの日だ。


部屋を一通り綺麗にしたあと、私は最後になぎさ先輩が座っていた椅子を直した。


もちろん、今日も目は合っていない。

それどころか私から声をかけることも怖くなってしまい、そういえばここ数日は〝なぎさ先輩〟と名前すら呼べていない。


元々、一線は引かれていた。でも最近は近づいたと思ってた。

なのに今は見える一線のほうがマシだったと思えるぐらいの壁がある。


「三上先輩とケンカでもしたの?」

天音くんがホウキを用具入れに片付けながら言った。


天音くんは私たちのピリピリとした空気感を感じていたけれど、先輩たちのように声をかけるのではなく静かに見守っていてくれていたことは分かっていた。


「ケンカ……だったらよかったんだけどね」

いっそのこと言いたいことを全部言って、思っていることをお互いにぶつけられたらどんなに楽だろうと思う。


距離は日に日に遠ざかるばかりで、なぎさ先輩が今なにを考えているのか推し量ることもできない。