「……な、つめ、なつめちゃん」
詩織先輩に声をかけられて私はハッと我に返った。
「大丈夫?顔色があんまりよくないけど……」
「だ、大丈夫です!」
私は空元気を見せつつ、再びキャンバスと向き合った。
詩織先輩が色々気にかけてくれていることは分かってるし、相談にも乗ってもらった。
でも、なぎさ先輩の過去は簡単には話せない。先輩が隠していることなら尚更に。
「なあ、なぎさ。これどう思う?もう少し顔がきつめのほうがインパクトあるかな」
松本先輩もまた美術展に向けて作品作りをしていた。
いつも人の顔をしたものばかりを制作している先輩は、今回天に昇るような龍を作っていた。まだ大まかに形作られているだけなのに、すでに迫力がすごい。
「顔じゃなくて、もう少し胴体を長くしたほうがよくない?」
「そうするとヘビになるだろ」
「いや、ヘビの神格化(しんかくか)したものが龍だから」
なぎさ先輩の様子は普段と変わらずいつもどおり。
でも、青いひまわりが描かれている紙は画板に留められたまま裏返しにされている。



