心にきみという青春を描く




なにに焦っていたのかは分からない。

手押しの信号機はわすか20メートル先に設置してあった。


でも、そこまで歩くことすら時間が惜しくて。楽しい雰囲気を壊さないように、せめてファミレスの入り口まで付き添うという考えも浮かばすに、俺は道路に飛び出した。


左右の確認はしなかった。

あまり車が行き交う場所でもないし、なにより反対側の道まではわずか数秒足らず。踏み出して道路の中央へと出たところで、「ププー!!」というけたたましいクラクションが辺りに鳴り響いた。


見通しのいい道路で車が走ってきてることに気づけないはずがなかった。

普通は気づけたはずだった。


なのに俺は周りを見ずに、飛び出してしまった。



「……先輩!!」

迫り来る車の音と交互に聞こえた葵の声。


ダメだ、と思った瞬間に、勢いよく背中を押された。

ドンッ!!という衝撃音とともに俺は反対車線へと転がり、俺はなにが起きたのは頭が真っ白になっていた。


背中に残るのは、誰かに押されたという手の感触だけ。