心にきみという青春を描く




それから帰るために電車に乗り、一時間半。

葵はその間、行きと同様にずっとお喋りをしていて、日向は相づちをしながらも居眠りをしそうになり。俺は先ほどの絵の続きを描きたくて手が疼(うず)いていた。


二時間スケッチしたと言ってもまだ薄い鉛筆でラフ画を描いただけのこと。

そこからコンクールの締め切り日までみっちりと描きこんで、折れそうなぐらい華奢な骨格や濁りのない瞳。

風で揺れる髪の毛一本一本の動きと、葵を彩るようにして咲くひまわりを早く完成させたい。



「ねえ、どっかでご飯食べて行こうよ」

見慣れた街に帰ってきた頃には、すっかり日が傾きはじめていた。どうやらずっとハイテンションだった葵は空腹の限界らしい。


「たしかに腹減ったよな。すぐそこのファミレスでいいじゃん」

「あ、私ドリンクバーの無料券持ってる!」


ファミレスに行く気になっているふたりとは真逆に、俺の頭は絵のことしか考えられなくなっていた。

スイッチが入るといつもこうだ。食事をすることも忘れて何時間も納得がいくまで手を動かし続ける。

気持ちが途切れるとすぐに気に入らなくなってしまうので、このスイッチが入っている内が勝負だと思ってる。


「ごめん。俺、早く絵が描きたいから帰るね」

気持ちばかりが先走っていた。


「え、先輩帰っちゃうの?」

残念そうな葵の顔なんて見ずに、俺は横断歩道のない道路を突っ切って、自宅へと続く反対側の道へ向かおうとしていた。