「ごめんね。付き合わせて。日焼けしちゃったかな……」
スケッチをはじめてから二時間。葵は文句も言わずに動かないでいてくれた。
「平気だよ。それに私のことを描いてくれるなんて夢みたいだよ」
ひまわり畑の鑑賞は夕方に終わりのようで、出口に向かって歩く人も多くなってきた。
「そろそろ私たちも帰らなくちゃね。電車の時間もあるし」
「だね。じゃあ、日向に連絡……」と、ポケットからスマホを取り出したところで、タイミングよく日向がこっちに向かって歩いてきていた。
「お兄ちゃん!」
葵が元気よく手招きをすると、日向も俺たちの存在に気づいたようだ。
日向がどうやって時間を過ごしていたのか分からないけど、ゆっくりひまわりを見て回るタイプでもないし。かと言ってコンクールに向けて真面目にアイデアを考えてたって感じでもないし……。
「ふあ……」
あくびを何回か繰り返しているから、おそらく暇をもて余していたに違いない。
「もしかしてお兄ちゃん、どっかで昼寝でもしてたの?」
「バーカ。こんなだだっ広い場所のどこで昼寝をするんだよ」
日向はそう言って葵の頭を小突いていた。
葵は「なぎさ先輩が私のことをモデルにしてくれた」と自慢気に報告していて、その顔はすごく嬉しそう。
俺もいい作品に仕上がるんじゃないかってわくわくしてるけど、日向はあまり興味がないようだ。



