心にきみという青春を描く




葵は嬉しそうに「ありがとう」と言ってベンチから腰を上げた。両手を空に突き上げて背筋を伸ばしたあと、迷いのない顔でこっちを振り向く。


「先輩、私ね。高校生になったら物作りから離れようと思ってるんだ」

「え……?」

「嫌いになったわけじゃないよ。でもずっと続けていけるか分からないし、物作りがいつかただの趣味になっちゃうのはイヤだなって。だからここはスパッと一線を引いて別のものに目を向けるのもいいかなって思ってる」


葵が心の底から物作りを楽しんでいたことは知ってるし、俺に〝描かずにはいられない人〟と言ったように葵は〝作らずにはいられない人〟。

だからこそそれが趣味になってしまうことがイヤな気持ちはよく分かる。


本当はずっと続けていきたいし、できることなら好きなことを仕事にしたい。でもそれができるのは一握りの人だけ。美術や芸術の世界は甘くない。

葵は猪突猛進だけど、自分の将来のことをしっかりと見据えての決断なんだろう。


「俺はやっぱりもったいないって思う気持ちもあるけど、葵が決めたことなら応援するよ」

「ありがとう」


葵はとてもいい顔をしていた。俺になにができるか分からないけど、ずっと隣で手助けをしていきたいと思う。